DIY初心者のためのハケの選び方(前編)
2013年12月18日 / 投稿者:Guardlac Staff / カテゴリー: 塗装道具
伝統あるハケメーカーの好川産業さん。今日は好川純子さんにハケ作りの工程や選び方、保管の仕方を伺いました。DIY初心者の方も、プロの方も必見です!
―さっそくですが、普段目にすることのないハケ作りの工程を教えていただけますか。
好川:はい。まずは動物の毛を使ったハケの場合は、動物の毛をわさっと買ってきます。その状態のままだと、脂分がかなり入ってるんですね。
―そのままでは使えないんですか?
好川:油分が入っていると塗料をはじいてしまいます。なのでまずは脂を抜くために、ボイルをしたり、アイロンを掛けたりするんです。
その時に毛にもみ殻の胚をかけて、一緒にプレスするとその籾殻に油が移ります。
ペンキ屋さんからもたまに聞かれるんですが、動物の毛のハケをしごくと粉がいっぱいフワって出てくるのはそういう理由なんです。
脂分を抜いて出来上がったヤギや馬の毛をそのまま使う場合は束にしますが、ハケにコシや含みをもたせるために豚の毛や短い毛を混合します。
おおよそ何対何という比率がありますが、その時々の毛の状態によって職人の手加減で毛を混ぜるんです。ずっと昔から行われてきたこの工程こそがハケ職人の技なんですね。
混毛した後は、毛を丸く閉じた後で平べったくします。
そして、出来上がった毛の先っぽだけのパーツを柄で挟みます。金属の板で巻いて中で接着剤で止めて、釘を打つ場合もあります。
最後に焼印を押して完成です。
―ハケの柄にはどんな木が使われているんですか。
好川:輸入品の安いハケはヤナギなどの雑木を使っています。ちょっと高級になると松を使ってます。ただ、松の場合はヤニがでるんで、ヤニをしっかり止めないとハケの柄がまだらになってくる。中にはメタセコイアもあります。国産の上等な刷毛はヒノキをつかっています。
―ホームセンターに行くとたくさんのハケが並んでいますが、どのハケを選んだら良いのか迷ってしまいます。
好川:大きく分けると、『ハケの形』と『毛の種類』が違うんですよ。
一般的なのは筋交い(すじかい)と言って、このように筋が斜めになっています。この筋交という形は斜めになっているので壁にハケを当てた時に楽なんです。実はこれ、海外にはなく日本独自の形なんですよ。
昔は、広い面を塗装する場合には平刷毛やズンドウが使われていました。
今は、ローラーで塗る方が早くて簡単なのでローラーを使われる職人さんが増えています。入門したばかりの職人さんでもローラーなら翌日からすぐに塗れるんですね。ハケだとそうはいかなくて、持ち方ひとつ、手の返し方ひとつで使いこなすのに時間がかかります。
逆に若い職人さんでこういうのを使われている方って、本当に塗装が好きでハケ塗りが好きな方ですね。
また、毛の種類で分けると、白い刷毛は動物の毛でヤギか豚か馬、または化繊になります。ナイロンという繊維ではなくて、化学繊維の中でポリエステル系の繊維ですね。今多く使われているのはペットボトルと同じ材質のPET(ポリエチレンテフタレート)になります。
―塗装をする際に、動物の毛の方がいい場合とナイロンの毛の方が良い場合があるんですか。
好川:そうですね。
もともとは化学繊維のハケは存在しなかったんです。化学繊維が一般的になってきたのはここ15年から20年ぐらいの話です。
動物の毛がなぜいいかというと、人間の髪と一緒でキューティクルがあるからです。動物の毛を拡大して見てみると、形は微妙に違いますけど、鱗状のものがあるので塗料をよく含みます。
また、動物の毛はいくら真っ直ぐに見えても捻じれたり動きがあるので、そこに空間が生まれて塗料がよく含まれます。
塗装する時には、力を加えたらびゅーっと出てくれる。バケツに入った塗料をハケにつけて壁に移すときに含みが良くて回数が少ないほうがいいわけですね。
きっちり含んで、きっちり吐き出してくれる。それがハケという道具の基本なんですよ。
―反対に化学繊維になると含みが落ちるんですか。
好川:そうなんです、一般的に化学繊維のハケは動物の毛に比べて含みは落ちます。
ただ、塗料の進化によって化繊のほうがいいという場合がここ数年増えてます。
昔は液体分が蒸発することによって塗膜になるっていうのが主流だったんですが、今は化学変化で硬化する塗料も増えているんですね。
動物の毛のハケで塗ると、アルカリ分と反応して塗膜になる前に刷毛の中で塗料固まってしまうことがあります。
―水性塗料のガードラックアクアやラテックスはナイロンの刷毛が良いということですね
好川:そうですね。水性塗料には化学繊維のナイロンを使ったハケがお勧めです。
(後編に続く)DIY初心者のためのハケの選び方(後編)
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2016,12,19 10:35 PM
平刷毛って何て読むんでしょうか。
2016,12,23 5:46 PM
コメント有難うございます。
平刷毛=「ひらばけ」と読みます。
今後は用語もブログで分かりやすいようにさせていただきます。
また何かございましたらお気軽にコメントいただけますと幸いです。